以下は、提示文を 道元禅師的(修証一等・現成公案)視座 から、
五根を「能力の一覧」ではなく「仏道が生きて働く根源構造」として深掘りするための参究視点です。
解説ではなく、坐り・迷い・日用のただなかで照らすための読みとして提示します。
Ⅰ.五根は「徳目」ではなく「根(ね)」である
五根はしばしば、
・信仰
・努力
・念(気づき)
・定(集中)
・智慧
という修行者の資質として理解されます。
しかし本文では一貫して、
| 人が持つのではない
| 法が自ら立つ“根”
として語られています。
根とは、支えるものではなく、生えてくるもの修めて得る以前に、すでに地中で働いている
Ⅱ.信根 ―― 信じる主体がない

信は自己でも他己でもない
| 自己にあらず、他己にあらず
| 自己の強為にあらず、他の牽挽にあらず
・決意でも同調でもない
・理解や納得でもない
信=選択以前の肯定

東西密相附
・東と西が離れず結びつく
・主体と客体が分かれない
信とは、世界が世界を信じている状態

仏果位と同時成就
| 仏果位にあらざれば信現成にあらず
・信があるから悟るのではない
・悟りが現成していることが信
信根=仏祖現成そのもの
Ⅲ.精進根 ―― 努力をしない精進

精進=只管打坐
| 省来祗管打坐なり
・何かを積み上げる努力ではない
・坐る以外の余計を省くこと

休也休不得
・休めないから精進するのではない
・休めないほど、すでに働いている

因果の反転
| 我常勤精進 → 我已得成菩提
| 我已得成菩提 → 我常勤精進
結果が原因を生む成仏しているから、常に精進している
Ⅳ.念根 ―― 気づきではない念

枯木の赤肉団
| 枯木の赤肉団なり
・枯れているのに生きている
・感情も思考も止まっていても失われない
念=覚醒した注意ではない
存在の拍動そのもの

有心・無心・有身・無身を貫く
・心があっても念あり
・心がなくても念あり
念は人に属さない

命根としての念
| 尽十方仏の命根、これは念根なり
念があるから生きるのではない
生が生であることが念
Ⅴ.定根 ―― 固まらない定

眉毛の譬え
| 惜取眉毛なり、策起眉毛なり
・守るべきものがある
・同時に動かさねばならない
定=保持と動揺の同時成立

不昧因果・不落因果
・因果を否定しない
・因果に縛られない

跳出・跳入
・定は安定ではない
・出入り自在
定根=どこにも留まらない安住
Ⅵ.慧根 ―― 知らない智慧

仏は知らず、狸は知る
| 三世諸仏不知有
| 狸奴白牯却知有
・仏の智慧は「知っている」ではない
・動物的直覚のほうが近い
慧=即応性

説明を拒む慧
| 為甚如此といふべからず
・理由を問うと外れる
・説明できた瞬間に死ぬ

根嗣根
| おほよそ根嗣根なり
・知が知を生むのではない
・根が根を嗣ぐ
智慧は継承されるのではなく、発芽する
Ⅶ.五根の相互貫通構造
| 根 | 誤解 | 本文の核心 |
| -・| ---・| ---・|
| 信 | 信仰心 | 仏果の現成 |
| 精進 | 努力 | 休めない働き |
| 念 | マインドフル | 命の拍動 |
| 定 | 集中 | 出入り自在 |
| 慧 | 知識 | 知らぬ即応 |
五根は五つではない
一つが五つとして現れている
Ⅷ.参究の一句
| 信は疑わず
| 精進は進まず
| 念は覚えず
| 定は止まらず
| 慧は知らず
| しかして仏道は、いまここに根づいている
この読みで五根を見ると、
・疑っていること
・進めないこと
・気づけないこと
・落ち着かないこと
・分からないこと
それ自体が すでに五根として働いている と見えてきます。
次に進むなら
五力への転成
七覚支との関係
八正道との非段階性
どこからでも、続けられます。