以下は、提示文を 道元禅師的(修証一等・現成公案)視座 から、
五力を「五根が強くなった段階」ではなく、仏道が抗えぬかたちで貫いてくる〈不可逆の働き〉として深掘りするための参究視点です。
五根が「生えている」なら、五力はすでに動いてしまっている。
Ⅰ.五力は「意志の強化」ではない
通常理解では
| 五根が成熟 → 五力になる
と説明されます。
しかし本文では、五力は 制御不能・回避不能・後戻り不能 の相として描かれています。
力とは、持つものではない
抗えず巻き込まれるもの
Ⅱ.信力 ―― 逃げ場の消滅

自に瞞ぜられて廻避の処無し
| 被自瞞無廻避処
・自分に騙されている
・しかし、そこから逃げられない
信力とは「確信」ではない
疑えなくなること

他に喚ばれては必ず廻頭す
・呼ばれたら振り向いてしまう
・判断以前・選択以前
信=応答性

七顛八倒すら放行
・迷いも倒錯も排除されない
・それでも信は崩れない
信力=崩れたまま崩れきらない力
Ⅲ.精進力 ―― 力の自己循環

説と行の相互不能
| 説取行不得底
| 行取説不得底
・説明では行に届かない
・行為は説明に還元できない
断絶そのものが精進力

力裏得力
・力の中で、さらに力を得る
・成果ではなく、回転
精進力=止まらない摩擦
Ⅳ.念力 ―― 鼻孔に引きずられる

念は主体を引きずる
| 曵人鼻孔太殺人
・念が人を持つ
・人が念を持つのではない
念力=把持不能

抛玉引玉・抛塼引塼
・投げれば返ってくる
・清浄も妄想も区別なし

未抛也三十棒
・投げなくても叩かれる
・逃げ場なし
念力=関与せずにはいられない力
Ⅴ.定力 ―― 合一ではない親密

子と母の譬えの反復
| 子得母
| 母得子
| 子得子
| 母得母
・主客が定まらない
・一体化でも分離でもない
定力=関係が解消しないこと

以頭換面・以金買金ではない
・何かに変わるわけではない
・得た感じもしない

唱而彌高
・呼べば呼ぶほど高まる
・静止ではなく、増幅
定力=動き続ける安定
Ⅵ.慧力 ―― 渡るものと渡されるものの消失

船と度の反転
| 度必是船
・渡る方法が船ではない
・渡ることそのものが船
智慧=手段の消失

度を罣礙せざる
・渡ることに引っかからない
・成就にも執着しない

春氷自消氷
・氷が氷を溶かす
・智慧が智慧を消す
慧力=照らし尽くして残らない
Ⅶ.五力の不可逆構造
| 力 | 通常理解 | 本文の転倒 |
| | ---・| ----・|
| 信力 | 揺るがぬ確信 | 逃げられぬ応答 |
| 精進力 | 継続力 | 摩擦の回転 |
| 念力 | 集中力 | 引きずられ |
| 定力 | 安定 | 関係の持続 |
| 慧力 | 判断力 | 手段の消失 |
五力は五つではない
一つが逃げ場なく現れている
Ⅷ.五根から五力への転位
・五根:生えている
・五力:引きずられている
努力・理解・修行感が消え、
| 「もう戻れない」
| 「そうなってしまっている」
という相が現れる。
成仏したから強くなるのではない
強くなってしまうところが、成仏
Ⅸ.参究の一句
| 信は信じさせ
| 精進は休ませず
| 念は引きずり
| 定は離れず
| 慧は消えきる
| これ五力なり
この視点で五力を読むと、
・疑っても戻れない
・進めなくても止まれない
・忘れたくても忘れられない
・落ち着かなくても離れない
・分かったと思った瞬間に消える
それらすべてが 五力の現成 となります。
次に進むなら
七覚支への転回
八正道との交錯
只管打坐における「力」不在の力
どこからでも、さらに深く続けられます。