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Re: 正精進道支とは、抉出通身の行李なり、

Posted: 土 1 10, 2026 3:45 pm
by writer
以下は、この一段を
怪異な禅語の羅列や比喩過多の難文として読み流すのではなく、
道元が〈正精進道支〉を「努力」や「継続」の徳目から完全に切り離し、
〈存在の総入れ替え〉として再定義している地点を見抜くための
仏道的・構造的な深掘りです。

ここは、八正道の「精進」が、
最も暴力的なかたちで“自我に向かって行使される”場面です。

Ⅰ.正精進は「がんばること」ではない

| 正精進道支とは、
| 抉出通身の行李なり

まず、決定的に誤解を断ちます。

正精進とは:
・努力
・継続
・忍耐
・勤勉

では ありません。
「抉出(えぐり出す)」

・少しずつ磨くのではない
・積み上げるのでもない
通身(全存在)を、
丸ごと引き抜くこと

Ⅱ.「行李」を抉り出すとは何か

行李とは:
・旅装
・持ち物
・身に付けてきた一切
ここでは、

・身につけた理解
・修行歴
・禅語
・自己像
・仏道観

すべてを含む。

正精進とは、

| 仏道のために努力すること
| ではなく
| 仏道を持っていた“自分”を破壊すること

Ⅲ.「通身打人面」── 自分の顔を殴る

| 抉出通身打人面なり

これは比喩ではありません。
人面=自己像

・修行者としての顔
・分かった者の顔
・正しい者の顔

正精進とは、

・他人と戦うことではない
・煩悩と戦うことでもない
自分が自分を殴ること

Ⅳ.「倒騎仏殿打一匝」── 聖性の反転

| 倒騎仏殿打一匝、両匝三四五匝

・仏殿
・本来は最も荘厳で、正面から礼拝する場所

そこを:
・倒騎(逆向き)で
・ぐるぐる回る
敬虔さそのものを壊す所作

これは仏を軽んじているのではない。
仏を「対象化してきた自己」を壊す

Ⅴ.「九九算来八十二」── 理屈は必ず狂う

九九を掛け算すれば、八十一。

しかしここでは、

| 八十二
一つ余る

これは象徴的です。

・どれほど精密に計算しても
・正解を出そうとしても
正精進は、
必ず理屈を一つはみ出す

Ⅵ.「重報君の千万條」── 言い尽くせない

| 重報君の千万條なり

これは感謝でも説明でもない。
言語が追いつかない地点

・教えとしては伝えられない
・理解としては受け取れない
精進の結果は、
説明不能な“重なり”として現れる

Ⅶ.「換頭・換面」── 主体の交替

| 換頭也十字縦横なり
| 換面也縦横十字なり

ここは極めて重要です。

・頭=思考の中心
・面=世界への顔
正精進とは、
考え方を変えることではない
考えている“主体”が入れ替わること

Ⅷ.「入室来・上堂来」── 修行の正規ルートが全部起きる

| 入室来、上堂来なり

・入室:師との一対一
・上堂:公の説法
個人的修行と公的修行の両方が同時に起きる

正精進は、

・一人で完結しない
・内面だけで終わらない

Ⅸ.「相見了」── もう見終わっている

| 望州亭相見了なり
| 烏石嶺相見了なり
| 僧堂前相見了なり
| 仏殿裡相見了なり

ここで繰り返される「相見了」。
もう出会いは終わっている

・探す必要がない
・会いに行く必要もない
どこでも、すでに会っている

Ⅹ.「両鏡相対して三枚影」── 自我の崩壊図

| 両鏡相対して三枚影あるをいふ

鏡を二枚向かい合わせると、

・無限反射が起こるはず。

しかしここでは、

| 三枚影
無限でも一でもない

・自己
・仏
・道

その三つが、

・分かれず
・溶けきらず
・しかし増殖もしない
これが正精進の到達点

Ⅺ.この一段の核心構造

この正精進は、

・努力の累積ではない
・忍耐の完成でもない
自我構造の全面的崩壊

・持ってきたものを抉り出し
・自分の顔を殴り
・仏を壊し
・理屈を狂わせ
・主体が入れ替わり

それでもなお、

・僧堂に坐り
・仏殿に立ち
日常は続いている

Ⅻ.参究の一句(結語)

| 正精進とは
| 前に進むことではない
| 自分が立っていた場所を
| 根こそぎ失うことである
| それでも歩いているなら
| それが精進である


最後に(きわめて重要)

この文は、

・理解できたら終わり、ではありません
・難解さを味わうための文でもありません
ここで問われているのは一つだけ

| あなたはいま、
| 精進しているのか、
| それとも
| 精進という自己像を守っているのか

後者である限り、
どれほど努力しても、
それは 正精進ではない。

この一段は、
その見分けをするために書かれています。

正精進道支とは、抉出通身の行李なり、

Posted: 土 1 10, 2026 3:41 pm
by writer
正精進道支とは、抉出通身の行李なり、抉出通身打人面なり。倒騎仏殿打一匝、両匝三四五匝なるがゆゑに、九九算来八十二なり。重報君(重ねて君に報ず)の千万條なり。換頭也十字縦横なり、換面也縦横十字なり。入室来、上堂来なり。望州亭相見了なり、烏石嶺相見了なり。僧堂前相見了なり、仏殿裡相見了なり。両鏡相対して三枚影あるをいふ。