五力
一者、信力
二者、精進力
三者、念力
四者、定力
五者、慧力
信力は、被自瞞無廻避処(自に瞞ぜられて廻避の処無し)なり、被他喚必廻頭(他に喚ばれては必ず廻頭す)なり。従生至老、只是這箇なり。七顛也放行なり、八倒也拈来なり。このゆゑに信如水清珠(信は水清珠の如し)なり。伝法伝衣を信とす、伝仏伝祖なり。精進力は、説取行不得底なり、行取説不得底なり。しかあればすなはち、説得一寸、不如説得一寸なり。行得一句、不如行得一句なり。力裏得力、これ精進力なり。
念力は、曵人鼻孔太殺人なり。このゆゑに、鼻孔曵人なり。抛玉引玉なり、抛塼引塼なり。さらに、未抛也三十棒なり。天下人用著未磷なり。
定力は、或者如子得其母(或いは子の其の母を得るが如し)なり、或者如母得其子なり、或者如子得其子なり、或者如母得其母なり。しかあれども、以頭換面にあらず、以金買金にあらず。唱而彌高なるのみなり。
慧力は、年代深遠なり。如船遇度(船の度に遇ふが如し)なり。かるがゆゑに、ふるくはいはく、如度得船(度に船を得たるが如し)。いふこころは、度必是船(度は必ず是れ船)なり。度の度を罣礙せざるを船といふ。春氷自消氷(春の氷自ら氷を消す)なり。
五力
■60.三十七品菩提分法:正法眼蔵 ■
★注目スレッド: 四念住 四念処とも称ず(1) 四正断 あるいは四正勤と称ず(0) 四神足(1) 五根(1) 五力(1) 七等覚支(1) 八正道支 また八聖道とも称ず(1) 釈迦牟尼仏言、三十七品是僧業。(1) 普勧すらくは尽十方の天衆生、(1) かくのごとくなるによりて、(1) 嵩山高祖古仏、(1) 釈迦牟尼仏言、(1) おほよそ仏法東漸よりこのかた、(1) おほよそ梵王、釈王、人王、龍王、鬼神王等、(1) あるいは又あまりさへは、維摩と釈尊と、(1)
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以下は、提示文を 道元禅師的(修証一等・現成公案)視座 から、
五力を「五根が強くなった段階」ではなく、仏道が抗えぬかたちで貫いてくる〈不可逆の働き〉として深掘りするための参究視点です。
五根が「生えている」なら、五力はすでに動いてしまっている。
Ⅰ.五力は「意志の強化」ではない
通常理解では
| 五根が成熟 → 五力になる
と説明されます。
しかし本文では、五力は 制御不能・回避不能・後戻り不能 の相として描かれています。
力とは、持つものではない
抗えず巻き込まれるもの
Ⅱ.信力 ―― 逃げ場の消滅
自に瞞ぜられて廻避の処無し
| 被自瞞無廻避処
・自分に騙されている
・しかし、そこから逃げられない
信力とは「確信」ではない
疑えなくなること
他に喚ばれては必ず廻頭す
・呼ばれたら振り向いてしまう
・判断以前・選択以前
信=応答性
七顛八倒すら放行
・迷いも倒錯も排除されない
・それでも信は崩れない
信力=崩れたまま崩れきらない力
Ⅲ.精進力 ―― 力の自己循環
説と行の相互不能
| 説取行不得底
| 行取説不得底
・説明では行に届かない
・行為は説明に還元できない
断絶そのものが精進力
力裏得力
・力の中で、さらに力を得る
・成果ではなく、回転
精進力=止まらない摩擦
Ⅳ.念力 ―― 鼻孔に引きずられる
念は主体を引きずる
| 曵人鼻孔太殺人
・念が人を持つ
・人が念を持つのではない
念力=把持不能
抛玉引玉・抛塼引塼
・投げれば返ってくる
・清浄も妄想も区別なし
未抛也三十棒
・投げなくても叩かれる
・逃げ場なし
念力=関与せずにはいられない力
Ⅴ.定力 ―― 合一ではない親密
子と母の譬えの反復
| 子得母
| 母得子
| 子得子
| 母得母
・主客が定まらない
・一体化でも分離でもない
定力=関係が解消しないこと
以頭換面・以金買金ではない
・何かに変わるわけではない
・得た感じもしない
唱而彌高
・呼べば呼ぶほど高まる
・静止ではなく、増幅
定力=動き続ける安定
Ⅵ.慧力 ―― 渡るものと渡されるものの消失
船と度の反転
| 度必是船
・渡る方法が船ではない
・渡ることそのものが船
智慧=手段の消失
度を罣礙せざる
・渡ることに引っかからない
・成就にも執着しない
春氷自消氷
・氷が氷を溶かす
・智慧が智慧を消す
慧力=照らし尽くして残らない
Ⅶ.五力の不可逆構造
| 力 | 通常理解 | 本文の転倒 |
| | ---・| ----・|
| 信力 | 揺るがぬ確信 | 逃げられぬ応答 |
| 精進力 | 継続力 | 摩擦の回転 |
| 念力 | 集中力 | 引きずられ |
| 定力 | 安定 | 関係の持続 |
| 慧力 | 判断力 | 手段の消失 |
五力は五つではない
一つが逃げ場なく現れている
Ⅷ.五根から五力への転位
・五根:生えている
・五力:引きずられている
努力・理解・修行感が消え、
| 「もう戻れない」
| 「そうなってしまっている」
という相が現れる。
成仏したから強くなるのではない
強くなってしまうところが、成仏
Ⅸ.参究の一句
| 信は信じさせ
| 精進は休ませず
| 念は引きずり
| 定は離れず
| 慧は消えきる
| これ五力なり
この視点で五力を読むと、
・疑っても戻れない
・進めなくても止まれない
・忘れたくても忘れられない
・落ち着かなくても離れない
・分かったと思った瞬間に消える
それらすべてが 五力の現成 となります。
次に進むなら
七覚支への転回
八正道との交錯
只管打坐における「力」不在の力
どこからでも、さらに深く続けられます。
五力を「五根が強くなった段階」ではなく、仏道が抗えぬかたちで貫いてくる〈不可逆の働き〉として深掘りするための参究視点です。
五根が「生えている」なら、五力はすでに動いてしまっている。
Ⅰ.五力は「意志の強化」ではない
通常理解では
| 五根が成熟 → 五力になる
と説明されます。
しかし本文では、五力は 制御不能・回避不能・後戻り不能 の相として描かれています。
力とは、持つものではない
抗えず巻き込まれるもの
Ⅱ.信力 ―― 逃げ場の消滅
| 被自瞞無廻避処
・自分に騙されている
・しかし、そこから逃げられない
信力とは「確信」ではない
疑えなくなること
・呼ばれたら振り向いてしまう
・判断以前・選択以前
信=応答性
・迷いも倒錯も排除されない
・それでも信は崩れない
信力=崩れたまま崩れきらない力
Ⅲ.精進力 ―― 力の自己循環
| 説取行不得底
| 行取説不得底
・説明では行に届かない
・行為は説明に還元できない
断絶そのものが精進力
・力の中で、さらに力を得る
・成果ではなく、回転
精進力=止まらない摩擦
Ⅳ.念力 ―― 鼻孔に引きずられる
| 曵人鼻孔太殺人
・念が人を持つ
・人が念を持つのではない
念力=把持不能
・投げれば返ってくる
・清浄も妄想も区別なし
・投げなくても叩かれる
・逃げ場なし
念力=関与せずにはいられない力
Ⅴ.定力 ―― 合一ではない親密
| 子得母
| 母得子
| 子得子
| 母得母
・主客が定まらない
・一体化でも分離でもない
定力=関係が解消しないこと
・何かに変わるわけではない
・得た感じもしない
・呼べば呼ぶほど高まる
・静止ではなく、増幅
定力=動き続ける安定
Ⅵ.慧力 ―― 渡るものと渡されるものの消失
| 度必是船
・渡る方法が船ではない
・渡ることそのものが船
智慧=手段の消失
・渡ることに引っかからない
・成就にも執着しない
・氷が氷を溶かす
・智慧が智慧を消す
慧力=照らし尽くして残らない
Ⅶ.五力の不可逆構造
| 力 | 通常理解 | 本文の転倒 |
| | ---・| ----・|
| 信力 | 揺るがぬ確信 | 逃げられぬ応答 |
| 精進力 | 継続力 | 摩擦の回転 |
| 念力 | 集中力 | 引きずられ |
| 定力 | 安定 | 関係の持続 |
| 慧力 | 判断力 | 手段の消失 |
五力は五つではない
一つが逃げ場なく現れている
Ⅷ.五根から五力への転位
・五根:生えている
・五力:引きずられている
努力・理解・修行感が消え、
| 「もう戻れない」
| 「そうなってしまっている」
という相が現れる。
成仏したから強くなるのではない
強くなってしまうところが、成仏
Ⅸ.参究の一句
| 信は信じさせ
| 精進は休ませず
| 念は引きずり
| 定は離れず
| 慧は消えきる
| これ五力なり
この視点で五力を読むと、
・疑っても戻れない
・進めなくても止まれない
・忘れたくても忘れられない
・落ち着かなくても離れない
・分かったと思った瞬間に消える
それらすべてが 五力の現成 となります。
次に進むなら
七覚支への転回
八正道との交錯
只管打坐における「力」不在の力
どこからでも、さらに深く続けられます。
五力
一者、信力
二者、精進力
三者、念力
四者、定力
五者、慧力
信力は、被自瞞無廻避処(自に瞞ぜられて廻避の処無し)なり、被他喚必廻頭(他に喚ばれては必ず廻頭す)なり。従生至老、只是這箇なり。七顛也放行なり、八倒也拈来なり。このゆゑに信如水清珠(信は水清珠の如し)なり。伝法伝衣を信とす、伝仏伝祖なり。精進力は、説取行不得底なり、行取説不得底なり。しかあればすなはち、説得一寸、不如説得一寸なり。行得一句、不如行得一句なり。力裏得力、これ精進力なり。
念力は、曵人鼻孔太殺人なり。このゆゑに、鼻孔曵人なり。抛玉引玉なり、抛塼引塼なり。さらに、未抛也三十棒なり。天下人用著未磷なり。
定力は、或者如子得其母(或いは子の其の母を得るが如し)なり、或者如母得其子なり、或者如子得其子なり、或者如母得其母なり。しかあれども、以頭換面にあらず、以金買金にあらず。唱而彌高なるのみなり。
慧力は、年代深遠なり。如船遇度(船の度に遇ふが如し)なり。かるがゆゑに、ふるくはいはく、如度得船(度に船を得たるが如し)。いふこころは、度必是船(度は必ず是れ船)なり。度の度を罣礙せざるを船といふ。春氷自消氷(春の氷自ら氷を消す)なり。
一者、信力
二者、精進力
三者、念力
四者、定力
五者、慧力
信力は、被自瞞無廻避処(自に瞞ぜられて廻避の処無し)なり、被他喚必廻頭(他に喚ばれては必ず廻頭す)なり。従生至老、只是這箇なり。七顛也放行なり、八倒也拈来なり。このゆゑに信如水清珠(信は水清珠の如し)なり。伝法伝衣を信とす、伝仏伝祖なり。精進力は、説取行不得底なり、行取説不得底なり。しかあればすなはち、説得一寸、不如説得一寸なり。行得一句、不如行得一句なり。力裏得力、これ精進力なり。
念力は、曵人鼻孔太殺人なり。このゆゑに、鼻孔曵人なり。抛玉引玉なり、抛塼引塼なり。さらに、未抛也三十棒なり。天下人用著未磷なり。
定力は、或者如子得其母(或いは子の其の母を得るが如し)なり、或者如母得其子なり、或者如子得其子なり、或者如母得其母なり。しかあれども、以頭換面にあらず、以金買金にあらず。唱而彌高なるのみなり。
慧力は、年代深遠なり。如船遇度(船の度に遇ふが如し)なり。かるがゆゑに、ふるくはいはく、如度得船(度に船を得たるが如し)。いふこころは、度必是船(度は必ず是れ船)なり。度の度を罣礙せざるを船といふ。春氷自消氷(春の氷自ら氷を消す)なり。